2024年8月
日本監査役協会 監査法規委員会
会社法では、株式会社の主な機関設計の選択肢として、「監査役(会)設置会社」、「指名委員会等設置会社」、「監査等委員会設置会社」が設けられており、それぞれにおいて、監査を行う機関として、監査役(会)、監査委員会、監査等委員会が設置されます。
取締役等の職務執行を監視・検証し、必要な場合には是正を行い、株主に結果を報告することが、監査役や監査委員、監査等委員の職責です。
これら三つの機関の相違については図解もご参照ください。
【補足】
会社の設立、組織、運営及び管理について定めた法律を「会社法」(以下、「会」と略称します)といいます。監査役や取締役等の権利義務等は主として会社法とその下位の法令(会社法施行規則、会社計算規則等(以下、それぞれ「施規」、「計規」と略称します))によって定められています。会社法は、商法や有限会社法等の中の会社に係る規定をまとめる形で2005年に成立しました。
会社法上、機関とは、株式会社の管理・運営にたずさわる者として、会社法に定められた人又は会議体をいい、どのような機関を設置するかを機関設計といいます。会社法上の公開会社かつ大会社においては、会社法によって一定の機関の設置が強制され、取締役会と会計監査人に加え、①監査役会、②指名委員会等(指名委員会・監査委員会・報酬委員会)及び執行役、③監査等委員会のいずれかを設置しなければなりません。監査役会を設置する株式会社を監査役会設置会社、指名委員会等を設置する株式会社を指名委員会等設置会社、監査等委員会を設置する株式会社を監査等委員会設置会社といいます。なお、公開会社とは、その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社(会2第5号)です。大会社とは、最終事業年度に係る貸借対照表に、資本金として計上した額が5億円以上又は負債の部に計上した額の合計額が200億円以上である株式会社(会2第6号)です。
明治期に監査役制度が導入され、商法及び会社法の改正の中で監査役の在り方や権限・義務に変更が加えられてきました。また、平成期に指名委員会等設置会社と監査等委員会設置会社の二つの制度が順次導入され、現在の形となりました。詳細は下記の年表をご参照ください。
監査役・監査委員・監査等委員の法律上の役割・義務や職責には、取締役であるか否かなどにより相違はありますが、取締役等の職務執行の監査という行為について比較すると、基本的に差異はなく、コーポレート・ガバナンスの担い手として、その職責を全うすることが求められます。
また、三つの機関設計については、自社の実情に応じて最も適した機関設計を選択することが求められます。なお、現状では監査役(会)設置会社を選択する会社が多数を占めており、近年、監査等委員会設置会社も増加しています。
次の項目(2.監査役の職責)以降は、多数を占めている監査役(会)設置会社について、法律の内容に則ってその職責と実務について、解説していきます。
商法及び会社法上の機関設計をめぐる法改正の歴史
旧商法公布
商法公布
昭和25年商法改正
昭和49年商法改正
平成5年商法改正
平成14年商法改正
平成26年会社法改正
【補足】
株式会社ではない、社団法人や財団法人等の各種法人や組合には、監事が設置されます。その法人や組合の設立の根拠となる法律によって、監事による監査の細部に相違はありますが、基本的には会社法による監査役監査の在り方に準じた規定が取り入れられていることがほとんどです。各法律の規定に従いつつ、また、監査役監査の多くの内容を参照しつつ、監事監査を遂行することが望まれます。